こんにちは、UNRWAヨルダン事務所の岡田二朗です。私は2022年11月から、UNRWAがヨルダンで実施する教育・保健・社会保障分野の事業の調整などを担当しています。
ヨルダンは日本の4分の1ほどの国土面積で、その8割は砂漠・半砂漠という最も水資源の少ない国のひとつです。
ヨルダンには周辺国のシリアを中心にイエメン、イラク、スーダンなどから76万の難民を、さらに230万人のパレスチナ難民を受け入れています。このパレスチナ難民の数はUNRWAが支援を実施する5つの地域(ガザ・ヨルダン川西岸、シリア、レバノン、ヨルダン)の中でも最も多く、国内には現在10カ所 のパレスチナ難民キャンプが登録されています。

国境をイラク、シリア、イスラエル、パレスチナ、サウジアラビアといった国や地域に接しながらも、ヨルダン国内の治安は安定していて、故郷を追われたパレスチナ難民にとって安全な避難先となってきました。しかし、ヨルダンは石油等の天然資源には決して恵まれた国でなく、また経済状況も世界的なコロナ禍や物価高騰の影響を受けて厳しい状況が続いています。そのため、ヨルダン国内のパレスチナ難民支援にはヨルダン政府だけでなく、各国の支援機関やNGO、またUNRWAなどの国際機関による支援が不可欠です。
今回は、UNRWAヨルダン事務所の教育分野での活動についてお伝えします。現在UNRWAはヨルダン国内に161の学校を運営しており、パレスチナ難民の子どもに無償で基礎教育を提供しています。これらUNRWAの学校では、現在1〜10年生(6歳〜15歳)まで合わせて11万人の子どもが学んでいます。


UNRWAの学校教育は、パレスチナ難民の学びの機会を保障することと、卒業後も子どもたちが受け入れ国で学びを続けられ、社会参加ができるようにすることを目的としています。そのため、ホスト国であるヨルダンの公立学校のカリキュラムと教材、人権教育などの国連が掲げる価値と原則を学ぶ補完教材の両方を使用しています。また、数世代にわたる難民としてのヨルダンでの生活を続けながらも、パレスチナ人としてアイデンティティを保つために、パレスチナの伝統や文化などに触れる機会も作っているそうです。

しかし、パレスチナ難民の数世代にもわたる避難先での教育を支えているUNRWAの学校は、課題にも直面しています。
人口の40%以上が18歳以下となるヨルダンでは、多くの学校で生徒数に対して必要な教室や教員の数が足りておらず、UNRWAの学校も例外ではありません。そのためほとんどのUNRWA学校では、2つの学校に通う生徒を1つの校舎で午前と午後の半分ずつのシフトに振り分けて授業を行う「二部制」での運営が続いています。
二部制ではシフト内の限られた時間内で授業を終える必要があるため、二部制でない学校と比べると、どうしても各コマの授業時間を5分から10分ほど短くしなければなりません。また、授業間の休み時間も3分ほどで終わり、駆け足となってしまいます。また、子どもたちの安全という観点から夕方5時までにはすべての授業を終えるため、午前のシフトは朝7時から授業を始めることも多く、特に遠くから徒歩で学校に通う子どもたちは早朝に家を出なければなりません。
また、12月初旬に初めてヨルダンのUNRWA学校を訪れた時、教室内には分厚いコートを着込んで勉強する子どもたちの姿がありました。実際に私も同じ教室に座ってみて、室内の温度が寒く感じました。中東というと、日本の皆さんはあたたかいイメージを持っているかもしれませんが、ヨルダンの冬は最高気温が5度を下回るほど寒く、石造りの建物内では自分の息が白く見えることもあります。
エネルギー価格が高額なことや夏と冬の寒暖の差が非常に大きいヨルダンでは、その学習環境をより改善していくことも課題の一つです。

このような各フィールドでの課題を解決に導くことも私の仕事の一つです。
学校を訪問すると子どもたちが手を振ってくれたり、大勢で近寄ってきてくれたりしてあたたかく迎えてくれました。また学校の子どもたちが元気に体育の授業で体を動かしたり、美術の授業で熱心に作品制作に励んだりする姿も見られました。
これからも難民の子どもたちに教育を届けるUNRWAの活動やヨルダンの様子もまた、日本の皆さんに報告します。

UNRWAヨルダン事務所
岡田二朗