UNRWA保健局の李美慧です。
今回は、5月にUNRWAの学校で開催されたパレスチナと日本の文化交流イベントのご報告をします。
2023年は、UNRWAが日本とパートナーシップを結んで70周年の年です。
この大切な年をお祝いしようと、5月のこどもの日にちなんで今回のイベントが行われました。

在ヨルダン日本国大使館と共同で企画された今回のイベントは、Baqa’a難民キャンプの中にある学校で行われました。1年生(6歳)から7年生(12歳)まで総勢1000人の生徒が通い、UNRWAの学校の中でもとても大きな学校の一つです。
UNRWAからは小川、岡田、李が参加し、在ヨルダン日本国大使館の職員の方々とJICA海外協力隊員の方にもご参加いただきました。
Baqa’a難民キャンプは、ヨルダンにある10のUNRWA難民キャンプの中でも一番大きなキャンプです。キャンプの中にはUNRWAが運営する16の学校と2つの診療所、市場や薬局があり、パレスチナ難民の生活を支えています。

Baqa’a難民キャンプは1968年の設立当初からすでに大きなキャンプでした。
当時は1.4㎢ほどの面積に5000ものテントが張られ、26,000人のパレスチナ難民が暮らしていました。現在は、ヨルダンの厳しい冬を超えられるよう、布製だったテントはコンクリート製のシェルターに置き換えられています。
学校に到着すると、イベントを前に目を輝かせた子供たちと、大空を悠々と泳ぐ鯉のぼりが迎えてくれました。

ところで、日本では毎年5月が近づくと必ず鯉のぼりを目にしますが、皆さんはどうして5月5日に鯉のぼりをあげるか知っていますか?
これは、中国の故事「登竜門・鯉の滝登り」が由来となっているようです。その由縁を、生徒の女の子の一人が英語で立派なスピーチをしてくれました。

中国には「竜門」とよばれる激流の滝があり、この滝を登りきった鯉が龍となって天へ昇ったという言い伝えがあったそうです。また、鯉は清流だけでなく、池や沼などの環境でも生息できる生命力が強い魚として知られています。
このことから、人生で逆境に遭遇しても、愛する我が子が鯉のように強く立派に成長していきますようにと願いを込めて、鯉のぼりをあげるようになりました。
子どもたちは、日本の歌での創作ダンス、パレスチナの伝統衣装の絵柄をデザインするコラージュアートや、思い思いに鯉のぼりの絵を描いて塗り絵をしたり、日本の習字にも挑戦しました。習字は少し難しかったようですが、お互いの名前をアラビア語と日本語で書きあい交換しました。



イベントの最後に大きく開いたくす玉の中からは、日本語で書かれたメッセージカードと鯉のぼりの形のキーホルダーが。裏側にはパレスチナの伝統刺繍の絵柄も描かれていました。
今回のようなイベントは頻繁にはないため、子供たちは大興奮でした。
異なる文化に触れる経験を通して、子どもたちはどんな夢や未来を描くのでしょうか。
どんな環境に生きる子どもでも、子どもらしくあること、心がワクワクする希望とともに生きていくこと。そんな機会が奪われてもいい子供はいないですね。
そんな居場所を守ることをしっかり支え関わっていきたいと、きらきらと美しく輝く子供たちの瞳を見ながらそんなふうに思いました。
大空を悠々と泳ぐ鯉のぼりのように健やかに力いっぱい子供たちが成長することを願って。

UNRWA保健局
李 美慧