2023年12月14日
私は火曜日(12日)の夕方にガザからジュネーヴに到着しました。
今回は、ガザ地区の最南端であるラファで滞在しました。この地域には、戦争が始まって以来、ほぼ100万人がこの地域に避難し、ほとんどの人々は避難場所を転々としてきました。 ラファでは一晩で人口が4倍に増えました。
この地域はガザ地区で最も貧しい人々が住んでいた場所であり、基本的なインフラや生活必需品が不足していました。よって、この地域では100万人以上ものガザ地区全域の人々が入れる余裕はありません。
あるUNRWAの倉庫には、現在3万人以上の人々が避難所として住んでいます。この場所では、戦争が始まってから、家族が毛布やプラスチックシートで仕切られた狭いスペースで生活しています。
しかし、前回のガザ訪問時と比較して変化したのは、以前は人口密度の高い避難所として国連の施設内に100万人以上が避難をしていたに対し、今回の訪問で目にしたものはその施設周囲の倉庫の外で何万人もの人々がテントをはり、避難所を拡張して生活していたことです。
冬が始まり、幸運な人々は、施設内に避難できます。しかし、他の人たちはどこにも行く場所がありません。彼らは野外で生活し、寒さ、泥、そして雨の中で生活しています。
どこを見ても、避難所は混雑しています。どこへ行っても、人々は絶望的で、飢えていて、毎日恐怖に怯えながら過ごしています。
そして、これも今までと違う状況の一つなのですが、ガザの人々は援助物資の入ったトラックを見るとトラックを止め、食料を取り、すぐにそれを食べ始めています。このことがどれだけ絶望的で人々が飢えているか、を表しています。ガザ地区の絶望的で深刻な問題です。
飢餓は、ガザの人々がこれまでに経験したことがないほどのものです。この数週間でさらにそれに拍車がかかり、1日、2日、または3日間も食べ物を得られていない人々に出会いました。だからこそ、時折、ガザの人々は走るトラックを止め、その場で食べ物を受け取り、食料を食べているのです。
ガザ地区の状況については、今日現在、戦争が始まって以来、135人のUNRWAスタッフが殺害されています。
何度もお伝えしてきたと思いますが、どこにも安全な場所はありません。法のもとに保護されるべき場所ですらも守られていません。
しかし、残念なことに、学校、医療施設、および国連の施設も、ターゲットにされています。
戦争の始まり以来、UNRWAの施設に関して、私たちは約150回、直接または間接的に施設が攻撃されたことを記録しています。これによって、270人以上が死亡し、1,000人以上が負傷しました。
命拾いをした人の中には、被害を受けたにもかかわらず、行く場所がないという事実から、これらの避難所にとどまらざるを得なかった人々もいます。
国連に関して、我々はイスラエル軍だけでなく、ガザの実効支配勢力にも、すべての国連施設の場所を共有し続けています。
さらに、ガザの人々は、命の価値がないと信じ、人権や国際人道法が適用されていないと感じています。国際社会に対し、深い裏切りと見捨てられたと感じているのです。
ガザの人々も他の誰と同じく、安全と安定を願っています。彼らはただ単に生きること、普通の生活を望んでいます。しかし、今はその普通の生活からは非常に遠いところにいます。
さらに、私を驚かせるのは、戦闘で見られるあらゆる不正行為に対する歓声、嘲笑です。
実際には、ガザで起こっていることは誰しも憤慨すべきであり、私たち全員が自らの価値観を再考すべきだと思います。
メディアの皆様に対しては、改めてガザの人々が経験していることを取り上げていただいたことに感謝します。しかし、ガザの人々だけでなく、地域全体の誰もが影響を受けていることを理解していただきたいです。皆さんもご存知のように、この戦争はテレビやソーシャルメディア上でも起きており、メディア戦争でもあるのです。
私はパレスチナ人とその援助を行っている人々を標的にした、中傷をするような発信に慄然としています。
この点に関して、私は誤情報と不正確な情報に警鐘を鳴らしています。皆さんの中には常にファクトチェックを行っている人たちもいることを知っています。正確な情報を得るためには、ファクトチェックが不可欠です。常に情報を確認し、検証し、反証するよう心がけていただきたいと思います。私はUNRWA事務局長として、本機関がこの戦争で攻撃の対象にされることを何度も経験しています。
加えて、ヨルダン川西岸地区の状況について最新の情報を共有させていただきます。この地区では、およそ20年ぶりに第2次インティファーダ以来の緊張状態を記録しています。死傷者や逮捕者が記録的に多い状況です。パレスチナ人の殺害を伴う侵攻や治安維持作戦がない日がないほどなのです。
ヨルダン川西岸地区の住民の間で恐怖が広がっており、変化が起きています。
銃器の使用を含む入植者の暴力的行為が著しく広がっていて、多くの武器が西岸地区全体に配布されていいます。
しかし、ここで経済的および財政的な点で問題が起きています。これにはイスラエルでの雇用不足、イスラエル系アラブ人が西岸で買い物ができないことや都市間の移動ができないこと、そして、パレスチナ自治政府が給与を支払うのに苦労していることが含まれます。ヨルダン川西岸では、経済的に深刻な問題が起きています。
最後に、私が先日、グローバル難民フォーラムで共有した3つの要請で締めくくります。
まず、人道的な停戦です。153の国連加盟国の支持を受けた国連総会の決断を歓迎します。今こそ、この人道的な停戦の呼びかけが現実に変わる時です。
2つ目は、ガザへの包囲を解除することです。私たちが今必要なのは、たった100台や200台のトラックではありません。ガザ地区へ、意味のある、規模の大きい、中断されることのない、無条件の供給が必要です。
私たち人道従事者だけでは、十分な支援を提供することができません。国境が正常に開かれず、物資がガザに正常に入ってこない限り、絶望的な人々のすべてのニーズをカバーすることはできません。70日間、アクセスが拒否されています。
最後に、国際人道法が意味を持つものにならないといけないことです。これは私たちが初めから言ってきたことでもあります。ガザで国際人道法が意味を持たないものになってはならず、都合よく解釈されてはいけません。この戦争にもルールがあり、これらのルールが適切に適用される時が来ています。
最後に、苦しみの中に競争は生まれません。
最終的には、この戦争で勝者はいないでしょう。
この戦争が続けば続くほど、損失は増えますが、それ以上に、悲しみが深まります。
したがって、世界で最も長く解決されなかったこの紛争を終わらせるために、適切で真の政治的プロセス以外に選択肢はないと、私は同僚と共に考えています。
75年間解決策が見つからなかったこの問題は、過去10年間、優先事項にされていませんでした。これを優先する時が来ています。
最後に、イスラエルとパレスチナは国家、平和、安定を受ける権利があります。平和と安定、それがこの地域に値する、ふさわしいものです。
※こちらは英語のスピーチを一部抜粋し、日本語訳したものです。原文(英語)は以下のリンクよりご覧いただけます。
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