UNRWAの活動
UNRWAは、パレスチナ難民のための保健、教育、社会サービス、保護、難民キャンプのインフラ整備と環境改善を担っています。
1. 保健
UNRWAの保健事業では、70年以上にわたり、パレスチナ難民に対し、予防から治療までの総合的なプライマリ・ヘルスケア を提供してきました。さらに、パレスチナ難民の患者が二次・三次医療を受けられるよう、サポートを行っています。
UNRWAの支援対象者の人口構造は、変化しています。高齢化が進み、非感染性疾患や、糖尿病、高血圧、がんなど生涯にわたるケアが必要な慢性疾患が特に増えるなど、保健サービスのニーズが多様化しています。健康に生きるためには、乳児期から老年期までのそれぞれの段階で、年齢に応じた継続的なケアの必要があります。そのため、UNRWAでは「ライフサイクル・アプローチ」を取り入れ、一括した予防から治療までの保健サービスを提供しています。
日本からのご支援は、UNRWAの保健事業のために、非常に大切なものです。例えばUNRWA診療所の改善に役立てられています。これらの診療所では、予防接種、妊産婦検診、歯科検診等を含む保健サービス、メンタルヘルスケア、心理社会的支援を提供しています。また日本のご支援で、母子健康手帳の導入に加え、母子健康手帳アプリや、非感染性疾患ケア・アプリの開発も実現しました。UNRWA保健事業の運営には、日本人職員も従事しています。
教育は、子どもの潜在能力を最大限に引き出すための基礎となるもので、基本的人権として保障されています。UNRWAは70年近く、パレスチナ難民の子どもたちへの質の高い教育の提供のために取り組んできました。質の高い教育を受けることで、パレスチナ難民の若者は、自らが置かれた世界を理解し、寛容、文化的アイデンティティー、ジェンダーの平等といった価値を広めていくことができます。
UNRWAの教育制度は、パレスチナ難民の子どもや学生の能力を最大限に伸ばすことに注力し、自信、創造力、好奇心、思慮、柔軟性、人としての価値の尊重、寛容、パレスチナ人としての誇りを大切にし、地元や国際社会の発展に貢献する人材を育てることを目指しています。
UNRWAは5地域で702校を運営し、年間約55万人のパレスチナ難民の子どもたちに無料で初等教育を提供しているほか、次の教育・訓練施設を運営しています。
- 教員養成校2校(ヨルダン川西岸およびヨルダンに各1校):約2000人が教育学を学んでいます。
- 技能・職業訓練センター8校:約8000人のパレスチナ難民が様々な分野の技能・職業訓練や高等教育を受けています。
UNRWAは、UNRWAの学校での教育内容が、国連の掲げる価値と原則に確実に準拠するよう努めています。UNRWAの学校では、受け入れ国の指導要領と教材に加え、人権を学ぶための補完教材も使用しています。詳しくはこちらの英語サイトへ
また受け入れ国において新たに出版された教科書すべてについて、その内容確認を定期的に実施しています。
3. 生計支援(社会保障)
UNRWAは、特に脆弱な立場にあるパレスチナ難民に対し、能力開発と自立支援を行っています。支援対象者には、女性、子ども、障がい者、高齢者が含まれます。
生活困窮者に対しては、四半期ごとにセーフティネット支援を届けています 。さらに、UNRWA小規模金融局では、パレスチナ難民と、社会的弱者むけの融資を提供し、持続的に所得を得られるよう支援しています。提供するサービスの内容は次のとおりです。
- 世帯、起業家、小規模事業主向けの融資・金融サービス
- 18歳から30歳までの若い起業家向けの開業資金の融資
この支援は、雇用の創出と維持、貧困削減、そして難民、特に女性の社会参加の促進につながるものです。パレスチナ難民、女性、若者、そのほかの社会的弱者に融資を受ける機会を提供することで、UNRWAが人間開発目標のひとつに掲げる「人間らしい生活水準の確保」を目指し、取り組んでいます。詳しくはこちらの英語サイトへ
4. 難民キャンプのインフラ整備と生活環境の改善
ヨルダン、レバノン、シリア、ガザ、そして東エルサレムを含むヨルダン川西岸には、認知されている難民キャンプが58か所あります。キャンプ内で暮らすパレスチナ難民もいれば、キャンプ外の近隣で暮らす人たちもいます。当初、キャンプ内は仮設テントが立ち並んでいましたが、長い年月が経過した今では、狭い路地沿いに複数階建ての建物が密集し、貧困層が数多く暮らす、超過密区域となっています。
パレスチナ難民のキャンプは、世界の都市部の中でも特に過密な場所のひとつと考えられています。キャンプは一時的な滞在を想定し設置されたものですが、数十年が経過し、建物の密集が問題となっています。これらの建物は建設基準を大きく下回っており、住民の命が危険にさらされているケースも多くあります。
国際法では、すべての人に、適切な生活水準を享受する権利が保障されています。この権利は住環境についてもあてはまり、難民が享受するその他の権利を害することなくすべての難民にも保障されるものです。そこで、UNRWAのキャンプ内インフラ整備・環境改善事業では、総合的、包括的、参加型、かつコミュニティー主導のプロセスを通じ、キャンプにおける建物と生活の質の改善に取り組んでいます。
5. 保護
近年、UNRWAはパレスチナ難民保護のための取り組みを大幅に強化してきました。取り組みには次の4要素があり 、これらは相互補完的なものです。
- UNRWAの支援活動すべてにおいて、保護基準の適用を徹底
- 人権・身体の安全への脅威からの保護および逆境から立ち上がる能力(レジリエンス)の向上
- 女性や子どもなど、脆弱なグループに対する暴力、虐待、放置、搾取への対策
- 国際法に照らし、パレスチナ難民の権利の擁護・促進に向け、人権侵害のモニタリング・報告と、公的・私的なアドボカシー活動の実施